α7Vは「部分積層」で何が変わった?旧型α7IVと比較して見えた決定的な違い

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待望のスタンダード機、その「中身」を紐解く

2025年12月、ついにそのベールを脱いだソニーの新しいスタンダードミラーレス一眼「α7Ⅴ。前モデルである α7IV が世界的なベストセラーとなってから約4年。長らく沈黙を守っていたソニーが満を持して投入したこの新機種は、発表直後からSNSやカメラコミュニティで大きな議論を呼んでいる。

発売から約2ヶ月が経過し、先行して実機を手にしたフォトグラファーや、初期ロットを手に入れたユーザーからの「生の声」も出揃ってきた。カタログスペックだけでは見えてこない、現場での使い勝手やリアルな評価はどうなのか。本記事では、現在判明している確実なスペック情報と、実際に使用したユーザーのレビューを基に、α7Ⅴ の全貌を徹底的に解剖していく。カメラに詳しくない人でも理解できるよう、専門用語の解説を挟みながら進めていくので、購入を迷っている人はぜひ参考にしてほしい。

第1章:α7Ⅴ の確実なスペック情報

まずは、現在メーカーから公表されている仕様と、複数の信頼できる実機検証から判明している「事実」としてのスペックを整理する。

基本スペック一覧表

項目SONY α7 V (ILCE-7M5)SONY α7 IV (前モデル)
センサー3300万画素 部分積層型CMOS3300万画素 裏面照射型CMOS
画像処理エンジンBIONZ XR2 (新世代)BIONZ XR
AI処理AIプロセッシングユニット搭載非搭載
ISO感度常用 100-51200常用 100-51200
AF測距点759点 (位相差AF)759点 (位相差AF)
連写速度最高約30コマ/秒 (電子シャッター)最高約10コマ/秒
動画記録4K 60p (ノンクロップ)4K 60p (Super 35mmクロップ)
モニター4軸マルチアングル液晶バリアングル液晶
EVF (ファインダー)約576万ドット 0.9倍約368万ドット 0.78倍
手ブレ補正8.0段 (ボディ単体)5.5段

核心技術:「部分積層型センサー」とは何か

今回のモデルチェンジで最も注目すべき「事実」は、センサーが**「部分積層型(ぶぶんせきそうがた)」**に進化した点だ。

カメラのセンサーには大きく分けて3つの段階がある。

  1. 表面照射型: 昔の技術。配線が光を遮ってしまい、暗い場所に弱かった。
  2. 裏面照射型(α7IVなど): 配線を裏側に回すことで光を効率よく取り込める。画質は良いが、データの読み出し速度には限界がある。
  3. 積層型(α1、α9など): センサーの裏にメモリ(記憶装置)を直接貼り付けることで、超高速でデータを処理できる。ただし、製造コストが非常に高く、カメラ本体が80万円〜100万円クラスになってしまう。

$\alpha7$ V が採用した「部分積層型」は、この「裏面照射型」と「積層型」の中間に位置する技術だ。センサーのすべての領域ではなく、データの通り道となる重要な部分だけに高速な回路を組み込んでいる。これにより、完全な積層型ほどコストを上げずに、従来の裏面照射型よりも圧倒的に速い読み出し速度を実現した。これが、後述する連写性能や動画性能の向上に直結している。

進化した頭脳:「AIプロセッシングユニット」

スペック表にある「AIプロセッシングユニット」とは、画像処理を行うメインのエンジンとは別に搭載された、**「被写体を認識するためだけの専用チップ」**のことだ。

これまでのカメラは、画面の中にある「色」や「明るさ」「顔のような形」を頼りにピントを合わせていた。しかし、このAIチップは、膨大なデータを学習しており、「これは人間」「これは車」「これは昆虫」と、被写体の意味を理解する。

特にソニーのAIは「骨格推定」という技術を使っている。手前に木があって顔が見えなくても、頭や肩、腰の位置関係から「ここに人がいる」と判断し、ピントを合わせ続けることができる。これが α7 IV からの明確なハードウェア上の違いである。

第2章:先行レビュワーたちが語る「現場の評価」

ここでは、発売直後から実機を使い込んでいるプロフォトグラファーやハイアマチュア、そして海外の著名なテック系YouTuberたちのレビューを分析し、共通して挙げられている評価をまとめる。

1. オートフォーカス(AF)に関する評価

多くのレビュワーが口を揃えて賞賛しているのが、やはりAFの進化だ。

  • 「吸い付くような追従性」動きの予測ができない子供やペットの撮影において、失敗写真が劇的に減ったという報告が多数ある。特に、前モデルα7 IV では、被写体が後ろを向いたり、急に画面の端に移動したりするとピントを見失うことがあったが、α7ⅤではAIが粘り強く追い続ける。
  • 「暗所での認識能力」暗い結婚式場や夜間のストリート撮影でも、瞳AFが正確に作動するという意見が多い。これは新しい画像処理エンジン「BIONZ XR2」のノイズ処理能力と、AIの認識能力が組み合わさった結果だと評価されている。

2. 連写性能と「ローリングシャッター歪み」

電子シャッター使用時の連写速度が最高30コマ/秒に向上したことも話題だが、それ以上に評価されているのが「歪みの少なさ」だ。

  • 「ゴルフのスイングが歪まない」従来の電子シャッター(サイレント撮影)で速い動きを撮ると、読み出し速度が遅いために、ゴルフクラブやバットがこんにゃくのように曲がって写る「ローリングシャッター現象」が起きていた。しかし、α7Ⅴ は部分積層センサーのおかげで読み出しが高速化し、この歪みが実用レベルまで抑えられている。完全な積層型である α9シリーズには及ばないものの、一般的なスポーツ撮影や鉄道撮影ならメカシャッターを使わずに電子シャッター(無音)で撮れるレベルに達しているという評価が支配的だ。

3. 動画性能:4K60p ノンクロップの恩恵

YouTuberやビデオグラファーからは、4K 60p の仕様変更が最も歓迎されている。

  • 「レンズ選びのストレスから解放された」前モデルでは、滑らかな60p動画を撮ろうとすると画角が1.5倍に狭くなる(クロップされる)ため、広角撮影をするにはさらに広いレンズを用意する必要があった。α7Ⅴでは写真と同じ画角でそのまま動画が撮れるため、24mmや35mmといった標準的な広角レンズの使い勝手が向上した。
  • 「手ブレ補正のアクティブモードが実用的」8.0段分の手ブレ補正は動画でも効力を発揮している。「歩き撮りでもジンバル不要とまでは言えないが、立ち止まっての手持ち撮影なら三脚がいらないレベル」という声が多い。特に、補正効果を高める「アクティブモード」使用時の画質劣化が軽減されている点も高評価だ。

4. 操作性とハードウェアの評価

  • 「4軸マルチアングル液晶は正義」上位機種であるα7Ⅴから継承されたモニター機構は、満場一致で高評価を得ている。チルト(上下)とバリアングル(回転)の良いとこ取りをしたこの機構により、光軸をずらさずに撮影したい写真ユーザーと、自撮りをしたい動画ユーザーの双方が満足している。
  • 「EVF(ファインダー)が見やすくなった」約576万ドットへの高精細化により、マニュアルフォーカス時のピントの山が掴みやすくなったという意見がある。長時間覗いていても目が疲れにくいという点は、地味だがプロにとっては重要なポイントだ。

5. ネガティブな意見(改善点)

もちろん、絶賛ばかりではない。いくつかの厳しい意見も散見される。

  • 「バッテリーの減りが早い」AIプロセッシングユニットや高速なセンサー読み出しにより、電力消費が増えているようだ。同じバッテリー(NP-FZ100)を使用しているが、実感として α7 IV よりも撮影枚数が1割〜2割ほど少ないという報告がある。予備バッテリーは必須アイテムと言えるだろう。
  • 「CFexpress Type A カードが高価」α7Ⅴの連写性能や高画質動画をフルに活かすには、一般的なSDカードではなく、高速な「CFexpress Type A」カードが必要になる。しかし、このカードはSDカードに比べて非常に高価だ。カメラ本体の価格上昇に加え、メディア代もかさむことに対する悲鳴にも似た声が上がっている。

第3章:α7Ⅴ の立ち位置と「買い」の判断

ここまでスペックとレビューを見てきたが、結局のところこのカメラは「買い」なのだろうか。

α7IV から買い替えるべきか?

前モデル α7 IV ユーザーにとって、買い替えの判断基準は明確だ。

  • 「動くもの(子供、ペット、乗り物)」を撮る人: 即買い替え推奨である。AI-AFと連写性能、歪みの少ない電子シャッターは、撮影の成功率を劇的に上げる。
  • 「風景や静止物」がメインの人: 急いで買い替える必要はないかもしれない。画素数は同じ3300万画素であり、出てくる絵(画質)そのものに劇的な変化はないからだ。

他社製品との比較

ライバルとなるのは、キヤノンの EOS R6 Mark III やニコンの Z6 III あたりだろう。

  • 対 キヤノン: キヤノンは操作性や持ちやすさに定評があるが、レンズのラインナップ(特にサードパーティ製)の豊富さではソニーに分がある。
  • 対 ニコン: ニコンの Z6 III も「部分積層センサー」を採用しており、強力なライバルだ。ファインダーの見え方はニコンが上手だが、オートフォーカスの被写体認識の種類や精度においては、AIチップを先行して熟成させてきたソニーが一歩リードしている印象を受ける。

第4章:用語解説による詳細補足

記事内で触れた専門用語について、初心者向けにさらに噛み砕いて解説する。

「ダイナミックレンジ」とは

レビューの中で「階調が豊か」という表現が使われることがあるが、これは**「ダイナミックレンジ」**が広いことを指す。

ダイナミックレンジとは、カメラが捉えられる「最も明るい光」から「最も暗い影」までの幅のことだ。これが広いと、逆光で人物を撮った時に、空が真っ白にならずに青色が残り、かつ人物の顔も黒く潰れずに表情が見える写真になる。α7Ⅴ は15ストップ以上(※S-Log3撮影時)の広いダイナミックレンジを持っており、明暗差の激しいシーンでも人間の見た目に近い自然な描写が可能だ。

「4:2:2 10bit」とは

動画性能でよく出る**「4:2:2 10bit」**という言葉。これは色の情報の「量」を表している。

  • 8bit: 約1677万色。普通に撮ってそのまま見るならこれで十分。
  • 10bit: 約10億7374万色。8bitの約64倍の情報量がある。夕焼けの空など、微妙なグラデーションがあるシーンを8bitで撮ると、色が縞模様(バンディング)になってしまうことがあるが、10bitなら滑らかに表現できる。また、後から編集で明るさや色を変えても画質が劣化しにくい。α7Ⅴ はこの10bit記録に標準対応しているため、プロのような色味(カラーグレーディング)を目指す人には必須の機能だ。

「フォーカスブリージング補正」とは

動画撮影中にピント位置を手前から奥に移動させた時、画面の画角が微妙に変わってしまい、映像がフワフワと動いて見える現象を「フォーカスブリージング」という。

ソニー純正レンズと組み合わせることで、カメラ側が自動的にこの画角変動を補正してくれる機能が「ブリージング補正」だ。これにより、映画のように落ち着いた品のあるピント送りが可能になる。α7Ⅴ ではこの補正精度も向上しており、対応レンズも増えている。

結論:新時代の「失敗しない」カメラ

α7Ⅴを一言で表すなら、「撮影者のミスをテクノロジーがカバーしてくれるカメラ」だ。

ピント合わせはAIが担当し、露出(明るさ)の失敗は広いダイナミックレンジが救ってくれる。手ブレは強力なボディ内補正が止めてくれる。

価格は決して安くない。しかし、一度しかない瞬間を「撮り逃がさない」ための保険と考えれば、その価値は十分にある。プロが仕事道具として信頼するのはもちろん、これから写真を趣味にしたい初心者こそ、このカメラの最新機能に頼るべきだと言えるだろう。

カメラを構え、被写体に向ける。あとはシャッターを切るだけ。

それだけで、ハッとするような一枚が生まれる。α7 V は、そんな写真撮影の純粋な喜びを、最も高いレベルで体験させてくれる一台だ。

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