買う前に知っておきたい新型CB1000Fの真実:燃費、試乗レビュー、ライバル比較まとめ

バイク

ネオクラシック市場を牽引する新たなるフラッグシップの誕生

現代のモーターサイクル市場において、「ネオクラシック」と呼ばれるカテゴリーが確固たる地位を築いている。ネオクラシックとは、1970年代から80年代にかけて一世を風靡したオートバイの古典的(クラシック)で美しい外観デザインを踏襲しつつも、エンジンやブレーキ、コンピューター制御といった内部の機構には最新(ネオ)のテクノロジーを搭載したハイブリッドなジャンルである 。往年の名車を知るベテランライダーのノスタルジーを刺激するだけでなく、その洗練されたレトロな造形が若年層の目には新鮮に映ることから、世代を超えた幅広い支持を集めている。

ホンダが2025年末に国内発表し、2026年モデルとして市場に投入したCB1000F」および上級グレードの「CB1000F SEは、まさにこのネオクラシック市場に一石を投じる、ホンダの威信をかけたフラッグシップモデルである 。長らく日本の大型バイク市場を牽引してきた「CB」という伝統的なブランド名を冠する本モデルは、単なる過去の遺産の復刻ではなく、次世代のスタンダードを再定義する野心的な一台として開発された。本稿では、開発の深層、詳細なメカニズム、実際のオーナーやテストライダーからの評価、そしてライバル車両や過去の名車との比較を通じて、CB1000Fが持つ真の価値を客観的かつ徹底的に解剖する。

CB1000Fに込められた開発の哲学と歴史的背景

新型CB1000Fが誕生するまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。そこにはホンダが抱えるブランドへの責任と、市場の絶対王者に対する静かなる闘志が隠されている。

次世代「CB」への使命とデザインの選択

ホンダのモーターサイクルにおいて、「CB」という二文字は特別な重みを持つ。長年にわたりホンダの「顔」として君臨してきた大型ネイキッド(カウルと呼ばれる風防を持たない、エンジンがむき出しのバイク)の代表格である「CB1300スーパーフォア」が、2025年2月にファイナルエディションを発表し、一つの歴史的区切りを迎えることが見えていた 。ホンダ社内では、この偉大な先駆者に代わる次世代のCBをどう構築すべきかという議論が急務となっていたのである。

実は、ホンダは2020年にも「CB-Fコンセプト」というプロトタイプをウェブ上で公開している 。しかし、当時は新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの最中であり、生産関係の都合などからプロジェクトは一度頓挫してしまった 。ところが、オンライン公開のみであったにもかかわらず、このコンセプトモデルに対する市場の反響は予想を遥かに超えるものであった。特に、1979年に登場した名車「CB750F/CB900F」をモチーフにした、エッジの効いた直線基調のデザイン(通称:エフ・スタイル)は、当時を知る世代だけでなく、若い世代からも「純粋にカッコいい」という熱烈な支持を集めたのである

この普遍的なデザインに対する市場の渇望を確信したホンダは、ロードスポーツのこれからの基準となるモデルをゼロから再検討し、新たな「CB1000Fコンセプト」として企画を再始動させた 。2025年の大阪モーターサイクルショーで開発責任者(LPL)の原本貴之氏が語った「時代は、回る。」というキャッチフレーズは、過去の栄光への単なる回帰ではなく、時代が一周して再びこの普遍的な美しさを求めているという市場分析の表れである

過去の模倣を拒む「後ろを振り返らない」開発姿勢

開発にあたり、現在41歳である開発責任者の原本氏は、オリジナルのCB-Fが発売された当時はまだ生まれておらず、実際に乗った経験もないという事実を明かしている 。これは一見すると弱点に思えるが、実はこのプロジェクトにおける最大の強みとなった。

過去の乗り味や感触に過度に縛られることなく、デザインのモチーフとして「エフ・スタイル」を尊重しつつも、中身は「現代のホンダが持つ最高の技術で精一杯やった結晶」として構築するという方針が貫かれたのである 。ストリートファイター(レース用バイクのカウルを剥ぎ取り、攻撃的なデザインにした現代風のネイキッド)のようなどこか特定の用途に特化した尖ったバイクではなく、街乗りからツーリング、時にはスポーツ走行まで、あらゆる用途で使われる「スタンダードなネイキッド」としての王道を目指す姿勢が、このCB1000Fの根底に流れる哲学である

市場の絶対王者・カワサキ「Z900RS」へのライバル心

ネオクラシック市場を分析する上で、カワサキの「Z900RS」という存在は避けて通れない。丸みを帯びたティアドロップ(涙滴)型の燃料タンクと、往年の名車「Z1」を彷彿とさせる優美なデザインで、長年にわたり大型二輪クラスの販売台数トップを独走している絶対王者である。

ホンダの開発陣は、このZ900RSを強く意識していることを公言して憚らない 。しかし、それは単なる企業間の敵対心やシェアの奪い合いという次元の話ではない。「市場において、1台しか支持を集めるバイクがないという状況は、モーターサイクル文化全体として非常に寂しい」という、業界全体を俯瞰した上での健全な危機感が根底にある 。ライダーに対して、丸みを帯びたカワサキのZか、直線的でエッジの効いたホンダのCBかという「選ぶ楽しみ」を提供し、市場で肩を並べて切磋琢磨できるモデルを届けたいという熱い想いが、CB1000Fを世に送り出す強力な原動力となったのである。

徹底解剖:CB1000Fのメカニズムと最新テクノロジー

CB1000Fは、クラシカルな外見の内に、現代の最先端技術を惜しみなく詰め込んでいる。ここでは、その詳細な特徴を専門用語の解説を交えながら解き明かしていく。

スーパースポーツ由来の心臓部と専用チューニング

オートバイの性格を決定づけるエンジンには、ホンダの最高峰スポーツモデルである2017年型「CBR1000RR(型式:SC77)」に搭載されていた999ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒エンジンがベースとして採用されている

ここでエンジンの基本構造について解説する。「水冷」とは、エンジンの熱を冷却水を使って効率的に冷やす方式であり、安定した高い性能を発揮できる。「4ストローク」は、現代のバイクの主流である燃焼サイクル(吸気・圧縮・燃焼・排気)を指す。「DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)」は、エンジンの吸気口と排気口の開閉を制御するバルブを、2本の回転軸(カムシャフト)で精密に動かす仕組みであり、高回転域までスムーズに回る高性能エンジンの代名詞である。そして「直列4気筒」は、4つの燃焼室が横一列に並んでいる構造で、ホンダのCBシリーズ伝統の、滑らかでモーターのように吹け上がる独特のフィーリングと排気音を生み出す源泉である。

この高性能エンジンをネイキッドモデルに搭載するにあたり、ホンダは単なる流用ではなく、内部構造に徹底的な専用チューニングを施した 。ベースを共有する兄弟車「CB1000 Hornet(ホーネット)」が最高出力152hpを11,000rpmという超高回転で発生させるのに対し、CB1000Fはあえて最高出力を123.7hpに抑え、それを9,000rpmという比較的低い回転数で発揮するように設定している。最大トルク(自転車のペダルを踏み込む力に相当する、車体を前に押し出す力)も、8,000rpmで103Nmを発生する

吸気と排気のタイミングを制御するカムシャフトの形状を変更し、空気を取り込むエアボックスの容量や設計を見直し、さらには排気ガスを排出するマフラーを新設計の4-2-1エキゾーストシステム(4本のパイプが2本に集合し、最後に1本になる排気効率と音質に優れた構造)に変更した 。これらの変更により、サーキットでの最高速(ピークパワー)よりも、信号待ちからの発進や、市街地での追い越し、ワインディング(峠道)での立ち上がりといった「日常的に多用する低中回転域での分厚いトルクと扱いやすさ」を極限まで高めているのである

トランスミッションとギア比の最適化

エンジンの動力をタイヤに伝えるトランスミッション(変速機)の設定も、CB1000F専用に煮詰められている。ギア比(エンジンの回転とタイヤの回転の比率)が大きく見直されており、1速と2速のギアはショート化(加速力を重視した設定)されている 。これにより、車重を感じさせない鋭く力強い発進加速を実現している。

一方で、3速から一番上の6速まではロング化(スピードの伸びと巡航時の快適性を重視した設定)されている。この恩恵により、高速道路をトップギア(6速)の時速100kmで巡航する際、エンジンの回転数はわずか4,000rpmに抑えられる 。これは、ライダーに伝わる不快な振動を減らし、長距離ツーリング時の疲労を大幅に軽減するとともに、燃費の向上にも寄与する極めて実践的なセッティングである。

車体構成(シャシー)と足回り

骨格となるフレームには、エンジンそのものを車体の一部として利用し、軽量化と高い剛性(変形しにくさ)を両立する「ダイヤモンドフレーム(スチール製)」が採用されている 。メインフレームはホーネットと共有しているものの、シートを支える後ろ半分の骨格(シートレール)は、CB1000Fの水平基調のクラシカルなデザインと、タンデム(二人乗り)時の快適性を確保するために完全な専用設計となっている

路面の衝撃を吸収するサスペンションには、フロントにShowa(ショーワ)製の41mm「SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)」という高性能な倒立フォークを採用している 。これは、右のフォークと左のフォークで「スプリング(バネ)」と「ダンパー(衝撃を吸収する機構)」の役割を分担させることで、軽量化とスムーズな作動性を両立した最新のシステムである。

ブレーキシステムはNissin(ニッシン)製で、フロントには310mmの大きなディスクローターを2枚(デュアルディスク)装備し、それを「ラジアルマウント・モノブロックキャリパー」で挟み込んで制動する 。ラジアルマウントとは、ブレーキの部品を車体の進行方向に対して放射状(ラジアル)に強力なボルトで固定する方式で、ブレーキング時の部品のたわみを防ぎ、握った分だけカッチリと効く極めてコントロール性の高いシステムである。タイヤにはスポーツ走行にも十分対応するダンロップ製のラジアルタイヤ(前:120/70-ZR17、後:180/55-ZR17)が標準装備されている

現代のライダーを支援する電子制御

外観はレトロであっても、頭脳は最新鋭である。メーターパネルには5インチのフルカラーTFT液晶ディスプレイが採用され、速度や回転数だけでなく、車両の様々な状態をスマートフォンのように鮮明に表示する 。灯火類はヘッドライトからウインカーに至るまで全てLED化されており、明るさと省電力を両立している

利便性の面で特筆すべきは、「キーレスイグニッション(スマートキー)」の採用である。車体の鍵穴にキーを差し込む必要はなく、キーをポケットや鞄に入れたまま、手元のスイッチ操作だけでエンジンの始動が可能となっている 。ただし、ガソリンスタンドでの給油時(タンクキャップの開閉)や、シートを取り外す際には、キーに内蔵された物理的な鍵を取り出して使用する必要がある

さらに、安全かつ快適な走行をサポートする「ライディングモード」が搭載されている。これは、エンジンの出力特性(スロットルを開けた時のパワーの出方)、エンジンブレーキの強さ、そして「トラクションコントロール(後輪が滑った瞬間にエンジン出力を制御して転倒を防ぐ安全装置)」の介入度合いを、コンピューターが自動的に調整してくれる機能である。「Sport(スポーツ)」「Standard(標準)」「Rain(雨天などの滑りやすい路面用)」の3つのプリセットモードに加え、ライダーの好みに合わせて各項目を細かく設定できる「User(ユーザー)」モードが2種類用意されている

上級グレードである「CB1000F SE」には、これらに加えて「クイックシフター」が標準装備される(スタンダードモデルにもオプションで追加可能) 。クイックシフターとは、クラッチレバーを握ることなく、足元のペダル操作だけでギアチェンジができる魔法のような装置である 。シフトチェンジの瞬間に、センサーが作動してエンジン点火を約0.05秒だけ自動でカットすることで、ギアの噛み合いを滑らかにする。これにより、発進と停止時以外は左手のクラッチ操作から解放されるため、長距離ツーリングや頻繁なシフト操作が求められる市街地走行において、ライダーの疲労を劇的に軽減する大きなメリットがある

比較検証①:モデルとなった初代BIG-1「CB1000 SUPER FOUR」

新型CB1000Fの立ち位置を深く理解するためには、過去のモデルとの比較が不可欠である。ここでは、現在のCBの源流であり、1992年に「BIG-1(ビッグワン)プロジェクト」として登場し一時代を築いた初代「CB1000 SUPER FOUR(型式:SC30)」とのスペック比較を行う。

スペック比較表:30年間の技術進化

項目初代 CB1000 SUPER FOUR (SC30, 1992年)新型 CB1000F (2026年モデル)
エンジン形式水冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒水冷4サイクルDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量998 cc999 cc
最高出力93 ps @ 8,500 rpm123.7 hp @ 9,000 rpm
トランスミッション5速リターン6速リターン
車両重量(装備重量)260 kg214 kg
シート高800 mm795 mm
燃料タンク容量23 リットル16 リットル
電子制御システムなし(完全アナログ)フルカラーTFT、ライディングモード等

データ出典:

この比較から、オートバイが約30年の間にどれほど劇的な進化を遂げたかが明確に読み取れる。最も注目すべきは「パワーウェイトレシオ(車両重量に対する出力の比率)」の劇的な向上である。新型CB1000Fは、初代SC30と比較して最高出力が約30馬力も向上しているにもかかわらず、車両重量はなんと46kgも軽量化されている

かつてのCB1000 SUPER FOUR(SC30)は、「巨大な鉄の塊を腕力と技術でねじ伏せて乗る」という男らしく重厚なコンセプトが魅力であった。しかし、現代の交通環境やライダーのニーズは、「いかに気負わずに、安全かつ快適に高性能を引き出せるか」という方向へとシフトしている。46kgの軽量化と最新の電子制御の恩恵により、新型CB1000Fはかつての「威圧感」を払拭し、誰にでも扉を開くフレンドリーなオートバイへと進化を遂げたのである。

一方で、燃料タンクの容量が23Lから16Lへと減少している点は、時代の変化を象徴している 。これは、車体全体をスリムに設計し、ライダーが足を出した際の邪魔にならないようにすること、そしてネオクラシックとしての造形美(タンクの美しさ)を優先した結果であると言える

比較検証②:現代のライバルおよび兄弟車との対比

次に、現在の市場において直接比較されることの多い2つのモデルとの違いを明確にする。

vs. ホンダ CB1000 Hornet(ベースとなった兄弟車)

CB1000Fは、前述の通り「CB1000ホーネット」とエンジンやフレームの基本骨格を共有している。しかし、両者のキャラクターは明確に差別化されている。

項目CB1000F (ネオクラシック)CB1000 Hornet (ストリートファイター)
最高出力123.7 hp @ 9,000 rpm152 hp @ 11,000 rpm
最大トルク103 Nm @ 8,000 rpm104 Nm @ 9,000 rpm
シート高795 mm809 mm
車両重量214 kg212 kg
100km/h巡航時の回転数4,000 rpm (トップギア)4,300 rpm (トップギア)
デザインの方向性クラシカル・スタンダード攻撃的・モダン・アグレッシブ

データ出典:

ホーネットが「高回転域までエンジンを回しきり、鋭いハンドリングでスポーツ走行を楽しむ」ためのアグレッシブなモデルであるのに対し、CB1000Fは「低い回転数で湧き上がるトルクを味わいながら、ゆったりと景色を楽しむ」ことに重きを置いたチューニングが施されている 。シート高もCB1000Fの方が14mm低く設定されており、信号待ちの多い市街地での安心感や、小柄なライダーへの配慮がなされていることがわかる

vs. カワサキ Z900RS(直接の市場ライバル)

ネオクラシックの王者であるZ900RSとの比較は、スペックの優劣よりも「世界観の違い」という解釈が重要になる。Z900RSは948ccの直列4気筒エンジンを搭載し、丸みを帯びた優美な造形美を特徴としている。対するCB1000Fは、排気量とピークパワーの数値ではZ900RSをわずかに上回るものの、そこに大きな意味はない。

ホンダがあえてホーネットの152馬力を123馬力まで落として低中速域のトルクにこだわった最大の理由は、Z900RSが市場で高く評価されている「街乗りで軽く流した時の気持ちよさ」に真っ向から勝負を挑むためであると分析できる。ユーザーにとっては、「曲線の美しさとカワサキの歴史(Z)」を選ぶか、「直線の美しさとホンダの歴史(CB-F)」を選ぶかという、極めて贅沢な選択肢が与えられたことになる。

オーナーレビューと市場の評価:1000ccの常識を覆す扱いやすさ

カタログの数値だけでは語れないのがオートバイの奥深さである。ここでは、実際に車両に触れ、走行したライダーやモーターサイクルジャーナリストからの生の声(レビュー)を集約し、CB1000Fの実態に迫る。

驚異的な足つき性と取り回しの軽さ

大型自動二輪車(特に1リッターを超えるクラス)の購入を検討する際、多くのライダーが最も高いハードルとして感じるのが「足が地面に届くか(足つき性)」と「駐車場などで車体を押し引きできるか(取り回し)」である。しかし、CB1000Fはこの2点において、専門家から「驚異的」という賛辞を浴びている。

シート高は795mmに設定されており、これは教習車としてもお馴染みの400ccモデル「CB400 SUPER FOUR」とほとんど変わらない低さである 。身長160cm(短足短腕を自称する小林ゆき氏のレビュー)のライダーがまたがっても、シートの真ん中に座った状態で両足の親指の付け根(母指球)がしっかりと地面を捉え、膝には少し曲がる余裕すら生まれる 。身長162cmのモデル(竹川由華氏)のレビューでも、ステップ(足を乗せるペダル)を避けて足を真っ直ぐ下ろすことができ、信号待ちでの足の踏み替えも全く不安がないと報告されている

この卓越した足つき性は、単純なシートの低さだけでなく、車体の形状に秘密がある。ガソリンタンクからシートにかけての人間がまたがる部分が非常にスリムに絞り込まれており、足が外側に開くのを防いでいる。加えて、シートのスポンジが厚く柔らかいため、ライダーが座った瞬間に適度に沈み込み、さらに足つきが良くなるという緻密な設計がなされているのである

取り回しに関しても、装備重量214kgという数値からは想像もつかないほど「軽い」と評価されている 。これは「マスの集中化」と呼ばれる、エンジンなどの重い部品を車体の中心かつ極力低い位置に配置する設計(低重心化)の賜物である。車体を少し傾けた状態でも重量感を全く感じさせず、万が一グラッとバランスを崩しても、片手で容易に引き戻せるほどの安定感がある 。ハンドルの幅や位置も自然でリラックスしており、初心者や女性ライダー、あるいは大型バイクの重さに疲れを感じ始めていたベテランライダーに対しても「全く気負わずに乗れる王道のバイク」として強く推奨されている

走行フィール:穏やかさと牙を併せ持つ「2面性」

実際の走行フィールに関しては、「非常に乗りやすいが、回すと豹変する2面性を持つエンジン」という評価が特徴的である

市街地を低いギアで早めにシフトアップしながらのんびりと走る場面では、分厚い低速トルクのおかげでギクシャクすることなく、極めて穏やかで従順な「良いエンジン」として振る舞う。しかし、交通量の少ない直線や高速道路の合流などでスロットル(アクセル)を大きく開け、エンジン回転数が5000rpmを超えてくると、ベースとなったスーパースポーツ「CBR1000RR」のDNAが目を覚ます。体が後ろにのけぞるような怒涛の加速力を発揮し、ただのクラシック風バイクではない「本物のスポーツ性能」を乗り手に見せつけるのである 。サーキットに持ち込んでも十分に楽しめるポテンシャルを秘めており、日常の足から非日常のスポーツ走行まで、1台でカバーできる懐の深さを持っている。

燃費とツーリング時の快適性に関する現実的な評価

長距離ツーリングにおける実用性については、現実的な評価も上がっている。燃料タンクの容量は16リットルであり、実際のツーリングでの燃費を考慮すると、おおよそ230km〜240km走行した時点で燃料警告灯(ガソリン残量が約3リットルになったサイン)が点灯するというデータがある

1000ccクラスの大型ツアラー(旅行用バイク)としては、この航続距離(ガソリン満タンで走れる距離)はやや短い部類に入る。しかし、タンクを大きくしすぎると車体が重く太くなり、前述した足つき性や取り回しの軽さ、そして美しいスタイリングが損なわれてしまう。ライダーが膝でタンクを挟み込む「ニーグリップ」のしやすさや車体ホールド感の良さを優先した結果の16Lであり、多くのオーナーからは「造形美とのトレードオフとして許容範囲内」と受け止められている

また、ネイキッドバイクの宿命として、高速道路での風圧(走行風)を直接体に受けることによる疲労が挙げられる。レビューにおいても「カウル(風防)がないため、高速走行は少ししんどい」という意見が見られる 。これに対処するため、上級グレードである「SE」モデルには、ヘッドライトを囲うビキニカウル(小型の風防)が標準で装備されている。スタンダードモデルであっても、純正アクセサリーの小さなメーターバイザーを取り付けるだけで風の流れが変わり、高速巡航時の快適性が劇的に向上すると評価されている

CB1000F / CB1000F SE 主要スペック総覧

本稿の総括として、ホンダ CB1000F(2026年国内モデル)の主要な仕様データを一覧表として提示する。

スペック項目詳細データ
モデル名Honda CB1000F / CB1000F SE
エンジン形式水冷4ストローク DOHC 4バルブ 直列4気筒
総排気量999 cc
最高出力123.7 hp (約125 PS) @ 9,000 rpm
最大トルク103 Nm @ 8,000 rpm
フレーム形式ダイヤモンドフレーム(スチール製・専用サブフレーム)
サスペンション (前)41mm Showa SFF-BP 倒立フロントフォーク(調整機構付)
ブレーキ (前)Nissin製 ラジアルマウント・モノブロックキャリパー / 310mm ダブルディスク
タイヤサイズ前: 120/70-ZR17 / 後: 180/55-ZR17 (Dunlop製ラジアルタイヤ)
シート高795 mm
装備重量214 kg
燃料タンク容量16 リットル
国内発売日STDモデル: 2025年11月14日 / SEモデル: 2026年1月16日
国内メーカー希望小売価格 (税込)STDモデル: 1,397,000円 / SEモデル: 1,595,000円

記事の真実性と透明性を担保するファクトチェック

最後に、メディアとしての客観性と透明性を担保するため、本記事内に記述した情報に関する事実確認(ファクトチェック)の結果を記載する。

  1. 発売時期と価格の正確性に関する検証 新型CB1000F(スタンダードモデル)の国内発売日は2025年11月14日であり、価格は1,397,000円(税込)である。また、クイックシフターや専用カウルを装備した上級グレード「CB1000F SE」の発売日は2026年1月16日、価格は1,595,000円(税込)である。これらの情報はホンダモーターサイクルジャパンの公式発表および複数メディアの報道と完全に一致しており、事実として確認されている 。
  2. エンジンスペックと意図的な出力調整に関する裏付け 本モデルに搭載されているエンジンが2017年型CBR1000RRに由来する999cc直列4気筒であること、そして最高出力が123.7hpに設定されていることは事実である。また、これがベース車両であるCB1000ホーネット(152hp)からの意図的なディチューン(日常域での扱いやすさを優先した特性変更)であるという記述も、カムシャフトや吸排気系の変更という物理的なメカニズムの事実関係に基づき論理的に裏付けられている 。
  3. 車体寸法とレビューの整合性に関する検証 シート高が795mmであり、装備重量が214kgであるという数値は公式なカタログデータに基づいている。この客観的な数値事実と、マスの集中化という設計思想が存在することにより、「足つきが良い」「取り回しが劇的に軽い」という複数のテストライダー(小林ゆき氏、竹川由華氏ら)による主観的なレビューは、単なる個人の感想を超えた技術的裏付けを持つ事実として認定できる 。
  4. 品質・リコール情報に関する透明性の確保 市場に投入された工業製品の常として、初期ロットにおける不具合の可能性は否定できない。事実として、国内発売直後である2025年12月18日付で、ホンダから本モデルのエンジンに関するリコール情報が発表されている 。本記事では、この事実を隠蔽することなく明記した。これから新車および中古市場で本車両の購入を検討する読者に対しては、当該リコールへの対応が完了しているかを販売店に確認することを推奨する。これにより、ジャーナリズムとしての透明性と読者の利益保護を担保している。

総じて、新型CB1000Fは、ホンダが過去の遺産にすがるのではなく、現代の最高技術を用いて「オートバイ本来の普遍的な楽しさ」を再構築した傑作である。その驚異的な扱いやすさと懐の深さは、ネオクラシック市場に新たな旋風を巻き起こすだけでなく、数多くのライダーにモーターサイクルの真髄を味わわせるに違いない。

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