ホンダS660完全レビュー:唯一無二の軽スポーツカーの魅力と実力

2015年に登場したホンダS660は、軽自動車規格でありながら本格的なスポーツカーとして設計された、まさに「唯一無二」の存在だ。ミッドシップレイアウトを採用した軽スポーツカーという、他に類を見ない個性的な一台を徹底解説する。

S660が特別な理由:ミッドシップの魅力

軽自動車初の本格ミッドシップレイアウト

S660最大の特徴は、S07A型直列3気筒DOHCターボエンジン(658cc、64PS/6,000rpm、104Nm/2,600rpm)を座席後方の中央に配置したミッドシップレイアウトだ。前後重量配分45:55という理想的なバランスにより、後輪の接地性と駆動力伝達効率が高く、旋回性能は軽自動車の枠を超えた本格派である。

手足のように操れる軽快なハンドリングと、しっかりした剛性感は、まさにスポーツカーそのもの。前輪165/55R15、後輪195/45R16と後輪が太いタイヤ構成、フロントマクファーソンストラット、リアマルチリンクサスペンション、前後φ260mmディスクブレーキという本格的な足回りが、この走行性能を支えている。

加速性能は控えめだがスピード感は十分

MTモデルは7,700rpm、CVTモデルでも7,000rpmまで回る高回転型エンジンは、軽自動車とは思えない気持ちよさだ。最高速度約140km/hという性能は、車重830kg(6MT)~850kg(CVT)という軽量ボディと相まって、十分なスピード感を提供する。軽自動車初の6速MTと7速パドルシフト付CVTの選択肢により、スポーツドライビングと日常使いの両立も可能だ。

デザインの魅力:プチスーパーカーの存在感

他に類を見ない独自性の高いスタイリング

S660のデザインは「プチスーパーカー」と評されるほど完成度が高い。全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,180mm、ホイールベース2,285mmというコンパクトなボディに、最低地上高125mmの低重心スタイルが、本格スポーツカーの存在感を演出している。最小回転半径4.8mという取り回しの良さも日常使いでのメリットだ。

他メーカーに類似車種が少ない独自性の高いデザインは、街中でも確実に注目を集める。無限仕様などのオプションを選択すれば、さらに個性的な仕上がりになる。

質感の高いインテリア

インテリアの質感も軽自動車とは思えないレベルだ。スイッチ類の配置や操作性も良好で、運転に集中できる環境が整っている。

実用性の現実:割り切りが必要な部分

積載性・居住性は完全に割り切り

S660は2人乗りで、荷室はほとんど期待できない。積載性・収納性は1.7点/5点という評価が示すように、実用性は完全に割り切る必要がある。

後方視界もデザインの都合でかなり限定的になっており、後退時は十分な注意が必要だ。日常の買い物や長距離移動には向かない。

燃費と維持費は軽自動車の恩恵

WLTCモード燃費は平均20km/L(市街地13km/L、高速道路18km/L)と優秀だ。CVT車にはアイドリングストップ機能も搭載され、さらなる燃費向上に貢献している。何より軽自動車規格のため、税金や保険料などの維持費が安価に抑えられるのは大きなメリットだ。

ユーザー評価:走りとデザインに集中した結果

実際のユーザー評価(5点満点)を見ると、S660の特徴が明確に表れている。

  • エクステリア:4.7点 – デザインへの高い評価
  • 走行性能:4.4点 – ミッドシップの魅力を実感
  • 燃費:4.4点 – 軽自動車らしい経済性
  • インテリア:4.4点 – 質感の高さを評価
  • 価格:3.0点 – スポーツカーとしては妥当
  • 乗り心地:2.9点 – スポーツ重視の設定
  • 居住性:2.6点 – 2人乗りの限界
  • 積載性:1.7点 – 完全に割り切り必要

この評価からも、S660が「走り」と「デザイン」に全振りした本格軽スポーツカーであることが分かる。

総評:唯一無二の価値を持つ軽スポーツカー

ホンダS660は、実用性を犠牲にしてでも「運転する楽しさ」を追求した、真のスポーツカーだ。ミッドシップレイアウトによる優れた旋回性能、プチスーパーカーと呼ばれる魅力的なデザイン、軽自動車規格による維持費の安さは、他では絶対に味わえない価値を提供する。

こんな人におすすめ

  • スポーツカーを手軽に楽しみたい
  • セカンドカーとして週末専用車が欲しい
  • 人とは違う個性的な車に乗りたい
  • 維持費を抑えながらスポーツドライビングを楽しみたい

こんな人には向かない

  • 日常の足として実用性を重視する
  • 荷物をたくさん積む必要がある
  • 乗り心地の良さを求める
  • 後席が必要

S660は確実に「割り切り」が必要な車だが、その分野では他に代替できない唯一無二の魅力を持っている。

運転の楽しさや所有する喜びを重視するなら、間違いなく検討に値する一台だ。

現在では生産終了により中古車市場での人気も高く、特に6MTモデルは高値で取引されることが多い。それだけ多くの人がS660の価値を認めている証拠といえるだろう。

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