パタゴニアの歴史と全貌:鍛冶屋から「地球を唯一の株主」にするまで

会社
  1. 1. イントロダクション:資本主義の再定義
  2. 2. 創業前史と初期の葛藤:1957年〜1972年
    1. 2.1 シュイナード・イクイップメントの設立
    2. 2.2 クリーンクライミング革命:最初の環境的決断
  3. 3. パタゴニアの誕生とアパレルへの進出:1973年〜1980年代
    1. 3.1 ラグビーシャツから始まった衣料部門
    2. 3.2 レイヤリング・システムの確立と素材革命
  4. 4. 成長の痛みと環境への覚醒:1990年代
    1. 4.1 1991年の危機と理念の再確認
    2. 4.2 オーガニックコットンへの全量転換(1996年)
  5. 5. アクティビズムの深化とビジネスモデルの革新:2000年代〜2010年代
    1. 5.1 「Don’t Buy This Jacket」キャンペーン(2011年)
    2. 5.2 Worn Wearと循環型経済
    3. 5.3 B Corp認証とベネフィット・コーポレーション
  6. 6. 2022年の構造改革:地球を唯一の株主にする
    1. 6.1 新しい所有構造の仕組み
    2. 6.2 「目的(Purpose)」への移行
  7. 7. 製品ラインナップのスペック分析とユーザーレビュー
    1. 7.1 フリース製品群:用途別比較
      1. A. シンチラ・スナップT・プルオーバー (Synchilla Snap-T Pullover)
      2. B. クラシック・レトロX・ジャケット (Classic Retro-X Jacket)
      3. C. R1 / R2 (Regulator) シリーズ
    2. 7.2 バギーズ・ショーツ (Baggies Shorts)
  8. 8. 専門用語解説:パタゴニアを深く理解するためのキーワード
    1. 8.1 リジェネラティブ・オーガニック (Regenerative Organic)
    2. 8.2 PFCフリー DWR (PFC-Free DWR)
    3. 8.3 フェアトレード・サーティファイド (Fair Trade Certified)
  9. 9. ファクトチェック:誤解と真実
    1. 9.1 疑惑:「会社譲渡は税金逃れではないか?」
    2. 9.2 誤解:「パタゴニアは非営利団体になった」
    3. 9.3 現状:「すべての製品がリサイクル素材100%ではない」

1. イントロダクション:資本主義の再定義

現代のアパレル産業において、パタゴニア(Patagonia, Inc.)ほど、商業的成功と環境倫理の厳格な追求を両立させ、その境界線を拡張し続けてきた企業は他に類を見ない。1973年の創業以来、カリフォルニア州ベンチュラに拠点を置くこの企業は、単なるアウトドアウェアの製造販売にとどまらず、サプライチェーンの透明化、環境再生型農業への投資、そして政治的アドボカシーに至るまで、企業の社会的責任(CSR)の概念を根底から覆す活動を展開してきた。

特に2022年9月、創業者イヴォン・シュイナードとその家族が、約30億ドル(当時のレートで約4300億円)と評価される同社の全株式を環境保護団体および信託に譲渡した決定は、世界中のビジネススクールや経済界に衝撃を与えた。彼らは「地球が唯一の株主(Earth is now our only shareholder)」と宣言し、従来の株主資本主義―すなわち、株主への利益還元を最優先するシステム―からの完全なる離脱を表明したのである。   

本報告書は、パタゴニアの半世紀にわたる歴史的沿革を詳細に紐解きながら、同社がいかにして「ピトン(登山用金具)」の製造から世界的アパレルブランドへと変貌を遂げたのか、その技術的・思想的進化を分析する。また、消費者や市場関係者が同社製品(シンチラ、レトロX、バギーズなど)をどのように評価しているのか、そのスペックと実用性を客観的データに基づいて比較検討する。さらに、同社が多用する「リジェネラティブ・オーガニック」「B Corp」といった専門用語の定義と意義を解説し、記事作成やSEO対策に有用な構成案を提示するものである。これは、単なるブランドヒストリーの羅列ではなく、持続可能なビジネスがいかにして収益性と目的(パーパス)を両立させているかを解明する包括的なケーススタディである。


2. 創業前史と初期の葛藤:1957年〜1972年

パタゴニアの歴史は、衣服の歴史ではなく、鉄と岩の歴史から始まる。その起源は、創業者の個人的な情熱と、道具に対する職人気質の探求心にあった。

2.1 シュイナード・イクイップメントの設立

1957年、当時19歳だったイヴォン・シュイナードは、自身が愛好するロッククライミングのための道具を自作し始めた。当時の欧州製ピトン(岩の割れ目に打ち込むハーケン)は軟鉄製で、一度打ち込んで引き抜くと変形してしまい、使い捨てに近かった。シュイナードは独学で鍛冶技術を習得し、カリフォルニア州バーバンクの廃材置き場で見つけた石炭用ストーブと金床を使い、クロムモリブデン鋼(航空機の着陸装置などに使われる高強度合金)を鍛造して、繰り返し使用可能な硬質ピトンを製作した。   

彼の作るギアはヨセミテのクライマーたちの間で瞬く間に評判となり、1時間あたり1.50ドルで販売された。この小さな鍛冶場が、後のパタゴニアの母体となる「シュイナード・イクイップメント(Chouinard Equipment)」の前身である。1965年には航空技師であったトム・フロストとパートナーシップを組み、生産体制を近代化。彼らのギアはデザインの美しさと機能性を兼ね備え、全米最大のクライミングギアメーカーへと成長していった。

2.2 クリーンクライミング革命:最初の環境的決断

1970年までには、シュイナード・イクイップメントは米国におけるクライミングギア市場のトップシェアを握っていた。しかし、シュイナードは自身の製品が引き起こしている環境破壊に直面することになる。硬いクロムモリブデン鋼のピトンは、繰り返しのハンマー打撃によって岩の割れ目を破壊し、ヨセミテの美しい岩壁を傷だらけにしていたのである。

ビジネスの観点から見れば、消耗品に近いピトンは安定した収益源であった。しかし、1972年、シュイナードとフロストは「自分たちが愛する自然を、自分たちの製品が破壊している」という矛盾に耐えきれず、売上の大半を占めていたピトンの製造中止を決断する。   

その代替案として彼らが提案したのが、岩の割れ目に差し込むだけで固定できるアルミ製の「チョック(ナッツ)」であった。彼らは1972年のカタログに、シエラネバダ山脈の自然保護を訴えるエッセイ「Clean Climbing(クリーンクライミング)」を掲載し、ハンマーを使わないクライミングスタイルへの移行を顧客に呼びかけた。このカタログは単なる商品リストではなく、企業の環境倫理を表明するマニフェストとしての役割を果たし、後のパタゴニアの企業文化の原点となった。これは、短期的な利益よりも環境への長期的責任を優先するという、同社の意思決定プロセスの最初の事例である。


3. パタゴニアの誕生とアパレルへの進出:1973年〜1980年代

クライミングギアの成功と並行して、シュイナードはウェアの機能性に着目し始めた。そのきっかけは、1970年のスコットランド遠征で購入したラグビーシャツであった。

3.1 ラグビーシャツから始まった衣料部門

当時のクライミングウェアは、動きにくく耐久性に欠けるものが多かった。しかし、シュイナードが手に入れたアンブロ社製のラグビーシャツは、激しいタックルに耐える頑丈な生地で作られており、その高い襟は重いギアスリングが首に食い込むのを防いだ。彼が米国に持ち帰ったこのシャツは仲間内で評判となり、シュイナード・イクイップメントは衣料品の輸入販売を開始する。

ウェア部門の売上が拡大するにつれ、硬質な金属製品のイメージを持つ「シュイナード」というブランド名は適さないと判断された。1973年、南米の地図にある遠隔地、フィッツロイ山群や氷河を擁する嵐の大地「パタゴニア(Patagonia)」の名を冠した衣料品ブランドが誕生した。この名称は、ロマン、冒険、そして手つかずの自然を想起させるものであり、あらゆる言語で発音しやすいという利点もあった。   

3.2 レイヤリング・システムの確立と素材革命

1980年代、パタゴニアはアウトドアウェアの概念を根本から変えるイノベーションを起こした。それが「レイヤリング・システム(重ね着)」の提唱と、化繊素材の積極的な導入である。

  1. ベースレイヤー(吸湿発散): 従来、肌着には綿やウールが使われていたが、綿は汗を吸うと冷え、ウールはチクチクするという欠点があった。パタゴニアはポリエステルを加工した新素材「キャプリーン(Capilene)」を開発。水分を吸わずに拡散させることで、汗冷えを防ぐことに成功した。
  2. ミッドレイヤー(保温): 北大西洋の漁師が着ていたパイル(人工毛皮)に着目し、モルデン・ミルズ社(現在のポーラテック社)と共同で、軽量で速乾性に優れた「シンチラ(Synchilla)」フリースを開発した。これはウールの代替となり得る革命的な素材であり、後のアウトドアファッションのスタンダードとなった。   
  3. アウターシェル(対候): 雨風を防ぐためのシェルジャケットをシステムの一番外側に配置した。

このシステム化により、ユーザーは気象条件に合わせて衣服を脱ぎ着することで体温調整が可能となった。また、パタゴニアは当時のアウトドアウェアが地味なアースカラー(褐色や深緑)ばかりだった中で、コバルトブルー、フレンチレッド、シーフォームグリーンといった鮮やかな色彩(ヴィヴィッドカラー)を大胆に採用し、アウトドアファッションの美的感覚を一変させた。   


4. 成長の痛みと環境への覚醒:1990年代

急速な成長は、同時に経営上の歪みも生み出していた。1990年代初頭、パタゴニアは深刻な経営危機と環境問題への直面に迫られる。

4.1 1991年の危機と理念の再確認

1980年代後半のバブル経済崩壊の波を受け、急拡大していたパタゴニアの在庫は積み上がり、キャッシュフローが悪化した。1991年、シュイナードは従業員の約20%にあたる120名のレイオフ(一時解雇)という苦渋の決断を迫られた。

この経験を通じて、シュイナードは「何のために会社を経営しているのか」を自問し、経営顧問団とともに企業の核心的価値観を明文化した。それは「最高の製品を作り、不必要な悪影響を最小限に抑え、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決策を実行する」というミッション・ステートメントに結実した。これ以降、パタゴニアは無秩序な拡大路線を捨て、自然な成長率(オーガニック・グロース)を維持する方針へと転換した。

4.2 オーガニックコットンへの全量転換(1996年)

1994年、パタゴニアは自社製品の環境負荷を調査する「エコロジカル・フットプリント」の計測を開始した。その結果、衝撃的な事実が判明する。石油由来のポリエステルよりも、天然素材であるはずのコットン(綿)の方が、環境に甚大な悪影響を与えていたのである。

当時の慣行農法による綿花栽培では、全農地の数パーセントに過ぎない綿花畑に対して、世界で使用される殺虫剤の約25%、農薬の約10%が投下されていた。これにより土壌は疲弊し、生産者の健康被害も深刻であった。ボストンにある店舗では、地下倉庫に保管されたコットン製品から揮発するホルムアルデヒドにより、従業員が体調不良を訴える事態も発生していた。   

これを受け、パタゴニアは1996年の春シーズンまでに、すべてのコットン製品を100%オーガニックコットン(無農薬有機栽培)に切り替えるという大胆な決断を下した。当時、オーガニックコットンの供給量は極めて少なく、コストも割高であったため、社内からは強い反対があった。しかし、シュイナードは妥協しなかった。結果として、初期にはコスト増による価格転嫁や一部製品の廃盤を余儀なくされたが、顧客はこの倫理的な決断を支持し、売上は回復・成長した。この成功体験は、「正しいことをすればビジネスも成功する」という同社の確信を深める契機となった。


5. アクティビズムの深化とビジネスモデルの革新:2000年代〜2010年代

21世紀に入り、パタゴニアは「企業の責任」の範囲をさらに拡大し、製品のライフサイクル全体に対する責任を負う姿勢を鮮明にした。

5.1 「Don’t Buy This Jacket」キャンペーン(2011年)

2011年のブラックフライデー(米国最大の商戦日)、パタゴニアはニューヨーク・タイムズ紙に全面広告を出した。そこには自社の人気製品であるR2ジャケットの写真とともに、「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という挑発的なコピーが躍っていた。   

この広告の真意は、逆説的なマーケティングではなく、過剰消費への警鐘であった。どれほど環境に配慮して作られた製品であっても、その製造には資源が消費され、廃棄物が出る。したがって、消費者は本当に必要なものだけを購入し、一度買ったものは修理して長く使い続けるべきだというメッセージであった。このキャンペーンは大きな議論を呼び、皮肉にもパタゴニアのブランド価値と売上を押し上げる結果となったが、同時に「Worn Wear(新品よりもずっといい)」プログラムの本格始動へとつながっていった。

5.2 Worn Wearと循環型経済

パタゴニアは、製品寿命を延ばすことが最大の環境貢献であると考え、修理部門の人員を増強した。ネバダ州リノにある修理センターは北米最大級の衣類修理施設となり、年間数万点のウェアを修理している。また、専用の修理トラックで全米を回り、他社製品を含めて無料で修理を行うツアーも実施した。さらに、中古品を回収・洗浄・修理して再販売するプラットフォームを構築し、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)の実践モデルを提示した。   

5.3 B Corp認証とベネフィット・コーポレーション

2012年、パタゴニアはカリフォルニア州で初めて「ベネフィット・コーポレーション(Benefit Corporation)」として登記された企業の一つとなった。これは、株主利益の最大化だけでなく、公益(環境、地域社会、従業員)への貢献を法的義務として定款に盛り込む企業形態である。

また、第三者機関B Labが運営する「B Corp(B Corporation)」認証も取得し、2024-2025年時点でのスコアは151.4〜166点という驚異的な数値を記録している(取得に必要な最低ラインは80点、一般企業の平均値は約50.9点である)。この認証は、パタゴニアの環境・社会への取り組みが、単なるマーケティング(グリーンウォッシング)ではなく、客観的な指標に基づいた実質的なものであることを証明している。   


6. 2022年の構造改革:地球を唯一の株主にする

2022年9月14日、創業50周年を目前に控えたパタゴニアは、企業統治の歴史に残る構造改革を発表した。それは、創業者一族が保有する約30億ドルの株式をすべて手放すというものであった。   

6.1 新しい所有構造の仕組み

イヴォン・シュイナードは、自身と家族が保有する株式を以下の2つの新しい事業体に譲渡した。

  1. Patagonia Purpose Trust(パタゴニア・パーパス・トラスト):
    • 保有比率: 議決権付き株式の100%(全株式の約2%)。
    • 役割: 会社の経営方針が、創業時のミッションや環境的価値観から逸脱しないよう監督する。いわば「会社の魂」を守る番人である。ここにはシュイナード家のメンバーやアドバイザーが関与するが、金銭的な利益は受け取らない。
    • 税務上の扱い: この信託への株式譲渡に対し、シュイナード家は約1,750万ドルの贈与税を支払ったとされる。   
  2. Holdfast Collective(ホールドファスト・コレクティブ):
    • 保有比率: 無議決権株式の100%(全株式の約98%)。
    • 役割: 環境保護活動を行う非営利団体(501(c)(4)団体)。パタゴニアが生み出す利益のうち、事業への再投資に必要な留保分を差し引いた残りすべて(年間約1億ドルと試算)が配当としてこの団体に支払われる。
    • 特徴: 通常の慈善団体(501(c)(3))とは異なり、501(c)(4)団体は特定の政治家への献金やロビー活動などの政治活動が無制限に行える。その代わり、寄付に対する税控除のメリットはない。シュイナード家は節税よりも、政治的な影響力を行使して気候変動政策を推進することを選んだのである。   

6.2 「目的(Purpose)」への移行

この決断の背景には、公開企業(上場企業)になることへの強い拒絶感があった。上場すれば、四半期ごとの利益を追求する株主からの圧力により、長期的な環境目標や従業員の福利厚生が犠牲になるリスクがある。また、会社を売却すれば、新しいオーナーが理念を継承する保証はない。

シュイナードは「Going Public(株式公開)」ではなく「Going Purpose(目的に進む)」という道を選んだ。これにより、パタゴニアは営利企業として競争力を維持しつつ、その利益が自動的に環境保護活動へと流れる永久機関のようなシステムを構築したのである。2024-2025年現在、ライアン・ゲラートCEOのもと、パタゴニアはこの新体制で運営されており、年間売上高は約15億ドルに達している。   


7. 製品ラインナップのスペック分析とユーザーレビュー

パタゴニアの製品開発哲学は「機能性」「修理可能性」「耐久性」に集約される。ここでは、特に人気の高い主力製品について、そのスペック的特徴と市場でのリアルな評価(レビュー)を詳細に分析する。

7.1 フリース製品群:用途別比較

パタゴニアのフリースは、その厚みや通気性によって用途が明確に細分化されている。

A. シンチラ・スナップT・プルオーバー (Synchilla Snap-T Pullover)

  • 歴史と概要: 1985年に登場したフリースの原点。レトロなデザインとリラックスした着心地が特徴。
  • スペック:
    • 素材:リサイクル・ポリエステル・フリース(中厚手)。
    • 重量:約374g〜530g(モデルによる)。
    • 特徴:ナイロン製の前立てと胸ポケット。
  • レビューまとめ:
    • 高評価: 「家の中で着るのに最高」「キャンプのリラックスウェアとして優秀」「耐久性が高く10年着てもヘタらない」。
    • 低評価/注意点: 「風を通すため、真冬の屋外で単体アウターとしては寒い」「サイズ感が非常に大きく、日本人サイズより1〜2サイズ下を選ぶ必要がある」「毛玉(ピリング)ができやすい場合がある」。   

B. クラシック・レトロX・ジャケット (Classic Retro-X Jacket)

  • 概要: 厚手のパイルフリースと防風バリヤーを組み合わせた、最も防寒性の高いフリース。
  • スペック:
    • 素材:6ミリ厚のシェルパ・フリース(外側)+吸湿発散性メッシュ(内側)+防風バリヤー(中間)。
    • 重量:約774g。
    • 機能:完全防風、ハイキュ・ピュア防臭加工。
  • レビューまとめ:
    • 高評価: 「ダウンジャケット並みに暖かい」「風を全く通さないのでバイクや自転車でも使える」「デザインが普遍的」。
    • 低評価/注意点: 「生地が硬く、ゴワゴワして動きにくい」「重い」「通気性が低いため、登山などの激しい運動には向かない(蒸れる)」「首元まで閉めると暖かいが、フリースが顎に当たって気になることがある」。   

C. R1 / R2 (Regulator) シリーズ

  • 概要: 登山やバックカントリースキーなど、運動量の多いアクティビティ向けに開発されたテクニカルフリース。
  • スペック比較:
    • R1エア: 中空糸をジグザグに織り込んだ構造。通気性と速乾性が極めて高く、行動中に着続けられる。
    • R2 TechFace: フリースのような保温性と、ソフトシェルのような耐候性(撥水・耐摩耗)を兼備。
  • レビューまとめ:
    • 高評価: 「R1は汗抜けが良く、ベースレイヤーの上に着ると体温調整が楽」「R2 TechFaceは岩場での擦れに強く、多少の雨なら弾く」。
    • 低評価/注意点: 「R1は風が吹くと寒い(シェルとの併用が前提)」「街着としてはデザインがスポーティすぎる」「タイトなフィット感なので体型が出る」。   

7.2 バギーズ・ショーツ (Baggies Shorts)

  • 概要: 1982年の発売以来、素材や細部をアップデートしながら愛され続ける水陸両用ショーツ。
  • スペック:
    • 素材:ネットプラス(リサイクルされた漁網)100%ナイロン。
    • 股下:5インチ(約13cm)と7インチ(約18cm)の2種類。
    • 加工:PFCフリーDWR(耐久性撥水)。
  • レビューまとめ:
    • サイズ感の謎: 多くの日本人ユーザーにとって、Sサイズでも「大きい」と感じることが多い。XSサイズが日本のMサイズ相当に近いという声が多数ある。   
    • 実用性: 「夏はこれしか履かない」「速乾性がすごく、川遊びからそのまま街に行ける」「ライナー(内側のメッシュ)が邪魔で切り取る人もいる(※現在は改善され履き心地が向上している)」。

8. 専門用語解説:パタゴニアを深く理解するためのキーワード

パタゴニアの製品タグやウェブサイトに頻出する専門用語は、同社の環境戦略を理解する鍵となる。

8.1 リジェネラティブ・オーガニック (Regenerative Organic)

  • 意味: 「環境再生型有機農業」。単に農薬を使わない(オーガニック)だけでなく、農業を通じて「土壌を修復」し、気候変動に対抗する農法。
  • メカニズム: 不耕起栽培(土を掘り返さない)、被覆作物(カバークロップ)の活用、輪作などを通じて、土壌中の微生物を活性化させる。健全な土壌は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収・隔離する能力が高まる。
  • ROC認証: パタゴニアは他社や専門家と協力し、「リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)」を設立。「土壌の健康」「動物福祉」「社会的な公平性」の3つを柱とする厳格な基準を設け、コットンの栽培などで導入を進めている。   

8.2 PFCフリー DWR (PFC-Free DWR)

  • 背景: アウトドアウェアの撥水加工(DWR)には、長らく過フッ素化合物(PFC/PFAS)が使用されてきた。これらは「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼ばれ、自然界で分解されにくく、生態系や人体への蓄積が懸念されている。
  • パタゴニアの取り組み: 機能性(水を弾く力)を維持しながら、PFCを含まない代替化学物質への切り替えを進めている。2024年時点で、パタゴニアの製品の大部分はPFCフリーDWRに移行しており、2025年までの完全廃止を目標としている。これは技術的に非常に困難な課題(油汚れに対する耐久性が落ちるなど)であったが、素材メーカーとの共同開発により克服しつつある。   

8.3 フェアトレード・サーティファイド (Fair Trade Certified)

  • 仕組み: パタゴニアがフェアトレード認証製品に対し、工場への支払いに加えて「プレミアム(賞与)」を支払う仕組み。
  • 使い道: このプレミアムは工場の経営者ではなく、労働者が管理する口座に直接振り込まれる。労働者たちは民主的な投票によって、その使い道(現金の分配、託児所の建設、奨学金制度、医療品バスケットの購入など)を決定する。
  • 実績: 世界中のサプライチェーンで75,000人以上の労働者がこのプログラムの恩恵を受けており、パタゴニアはアパレル業界におけるフェアトレードの最大規模のパートナーの一つである。   

9. ファクトチェック:誤解と真実

パタゴニアに関する情報は膨大であり、一部には誤解や古い情報も流布している。ここでは重要なトピックについて事実確認を行う。

9.1 疑惑:「会社譲渡は税金逃れではないか?」

  • 検証: 一部の富裕層批判として、シュイナード家の株式譲渡が節税対策ではないかと疑われることがある。
  • 事実:
    • シュイナード家は、議決権を持つ株式(2%)を「パタゴニア・パーパス・トラスト」に譲渡した際、約1,750万ドルの贈与税を支払ったと報じられている。   
    • 残りの98%の株式を寄付した「ホールドファスト・コレクティブ」は、501(c)(4)団体である。米国の税法上、この種の団体への寄付は所得税控除の対象にならない。もし節税が目的であれば、政治活動が制限される代わりに税控除が受けられる501(c)(3)団体(通常の財団)を選んだはずである。
    • 結論: シュイナード家は、税制優遇を捨ててでも、「政治的な発言力」と「使途の自由度」が高い組織形態を選んだと言える。したがって、単なる税金逃れという批判は事実に反する側面が強い。

9.2 誤解:「パタゴニアは非営利団体になった」

  • 検証: 「地球が株主」という見出しから、パタゴニアが営利活動をやめたと誤解されることが多い。
  • 事実: パタゴニア(Patagonia, Inc.)自体は、現在も**営利企業(For-Profit Corporation)**である。
  • 解説: パタゴニアは以前と変わらず、ウェアを製造・販売し、利益を上げている。変わったのは「その利益の行き先」である。以前は創業家の資産となっていた配当金が、現在はすべて環境保護団体に流れる仕組みになった。つまり、「環境保護のためにお金を稼ぐマシン」になったのであり、ビジネスとしての競争力や収益性は依然として重要視されている。   

9.3 現状:「すべての製品がリサイクル素材100%ではない」

  • 事実: 2024-2025年のデータにおいて、パタゴニア製品ラインの**98%**にはリサイクル素材が使用されているが、100%ではない。   
  • 解説: 一部のジッパー、ボタン、伸縮性を持たせるためのスパンデックス(ポリウレタン)、あるいは高い強度が求められる特定のギア部品などでは、バージン素材や代替素材が必要な場合がある。目標は「バージン石油由来素材のゼロ化」であり、リサイクル・ポリエステル、リサイクル・ナイロン、ヘンプ、オーガニックコットンなどの「好ましい素材(Preferred Fibers)」の使用率は94%を超えているが、完全な100%には技術的な壁が残っている。
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